戦後教育は変われるのか―「思考停止」からの脱却をめざして―

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貝塚茂樹 著

日本教育新聞社 『週刊教育資料』 第1034号(2008年7月14日号)
飯田 稔 (千葉経済短大名誉教授)

二〇〇六年十二月、教育基本法は全面改正された。改正反対派は、従来の論壇の主張。賛成派は、改正により教育問題のすべてが解消されるかのような主張。どちらの側の主張も、“世論”を引き付けることはできなかったようだ。従って“世論”は、この問題について“冷めて”いたと申せよう。

戦後の教育問題論議は、二項対立(戦前悪・戦後善、国家悪・教育運動善)の図式で進んできた。これに慣れてしまうと、思考停止状態に陥ってしまうことが困る。戦後教育史を考えたり学ぶとき、目を向けなければならない点だ。教育実践の場に間が悔いた評者は、それをいつも感じていた。

二項対立図式の状況を脱却し、実りある教育論議を深めるためにはどうするか。「『思考停止』からの脱却をめざして」と副題の付く本書は、それに真正面から迫ろうとする。

戦後教育の“思考停止状態は、深刻にして強固”であることは、本書が指摘するごとくである。その状態を、本書は、「戦後教育論」と「道徳教育論」「学校・教師論」の三つを切り口にして、分析と批判を深める。

「“開かれた学校”と、教師の意識改革で済むのか」「戦後教育の“語り”を超えて」などの著者の問題提起・指摘に、読者はいくつもの事柄を考えさせられる。戦後教育を、自らが考えなければならない今だから……。

著者(武蔵野大学教授)は、日本教育史・道徳教育の研究者として知られている。先年までは国立教育政策研究所主任研究員であった。

混迷する議論からの脱却に、読みたい一冊である。

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