サービス・ラーニング研究―高校生の自己形成に資する教育プログラムの導入と基盤整備―

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山田 明 著

「西日本新聞」 2008年8月28日 21面

学習成果を地域に還元

 「サービス・ラーニング」という教育方式がある。学校で学んだ教科や知識を生かし、地域社会にボランティアで還元する。1980年代からアメリカで流行。日本では、宗像市の特定非営利活動法人(NPO法人)「サービス・ラーニング・フォーラム宗像」の山田明代表(47)=宗像市大谷=が中心となり、北九州市や宗像市の高校生と協力して研究を重ねている。

―「サービス・ラーニング」とはどのようなものですか。

学校で実際に学習したことを、ボランティア活動(サービス)を通して地域社会に還元します。活動を通して感じた知識の不足を、日常の学習で補い、生徒自信がさらに成長しようというものです。

―着目したきっかけは。

1993年に国際交流の一環でアメリカの高校を視察しました。当時はクリスマスで、現地の生徒が施設の子どもたちにさまざまなプレゼントを用意していました。例えば、文学専攻の生徒は物語を、工学専攻の生徒はおもちゃを作ってプレゼントしていました。自分たちが学んだ知識を生かしてボランティア活動する。学問が実際に生きるという体験をした生徒たちは、学習に対する意欲が強くなっていました。

―日本ではどのように活動しているのですか。

2004年にNPO法人を設立ました。同年夏には、宗像市出身の高校生23人と、地域住民の市に対する要望や意見を該当調査士、市に嘆願書を提出しました。また、八幡東区と若松区では、地元の高校生と『地域活性化新聞』を作り、住民に配布しました。現在は門司区の栄町銀天街についての新聞を作っています。

―「サービス・ラーニング」の精神はどのように生かされているのですか。

調査活動に必要な数学や表計算の力、新聞作製に必要な国語力や歴史の理解力など、今まで学んだことを存分に発揮してもらいます。加えて、市の行政担当職員や新聞記者ら専門家を招き、学生に専門知識を学ばせます。それだけに終わらせず、活動の反省を踏まえて学習し、今後も日常的に地域社会に貢献したいと考えます。

―「サービス・ラーニング」に関する本を出版したそうですが。

高校で教諭をする一方で、大学院で研究を進めてきました。その成果をまとめた本です。日本ではまだまだ浸透していない教育方式ですが、生徒の学習意欲向上と主体性の確立の処方せんになると確信しています。青少年の教育に携わる人に読んでもらいたいですね。

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