山口祐弘 著
A5判・上製・ 340頁
定価5,880円(本体5,600円+税)
ISBN978-4-284-00065-9
2007年9月
ヘーゲル哲学と弁証法は不可分である。ヘーゲルの客観的内在的弁証法はヘラクレイトスに遡り、プラトンを範とする。その本質を知るには古今東西の思想との対話が求められる。弁証法の歴史的前提を探り、近代における弁証法の役割を考察し、体系の危機と思弁の死が語られる現在における弁証法の可能性と課題を、アドルノとともに問う。併せて、アジアと日本、とりわけ西田幾太郎、田邊元哲学における弁証法の受容とそれとの対決の仕方を学ぶ。
【目次】
序
第1部 へーゲル弁証法への道
第1章 先駆思想
1 弁証法の多義性 2 思惟の威力
3 普遍への弁証法と普遍の弁証法 4 弁証法的意識の陶冶
第2章 プラトンとの対話
1 思弁的弁証法の発見 2 同一性のパラドックス
3 逆接の構造 4 へーゲルの独自性
第3章 弁証法の論理
1 反対への移行 2 関係性の洞察
3 反転の論理 4 無限判断の地平
第2部 近代における弁証法の位相
第1章 フィヒテとへーゲ
1 弁証法的思惟の前提 2 無限性と無限判断
3 措定判断と反省 4 絶対者の反省的認識
第2章 アドルノの否定弁証法
1 概念的思惟の限界 2 弁証法の否定性
3 近代のアンタゴニズムと思惟のアンティノミー
4 客観の優位と哲学の自由
第3章 体系哲学の可能性
1 体系の弁証法 2 体系構築の難関
3 へーゲルにおける体系の原理 4 非同一性への開放
第3部 東洋思想の反響
第1章 弁証法的否定の水脈
1 超越論的対象の反省構造 2 主語定立の場面と意味
3 無限否定の発見 4 否定の開示機能
第2章 西田哲学との対論
1 無限判断の意義 2 否定の階梯
3 対立の場所 4 場所的論理と自己疎外的精神
第3章 田邊元とへーゲル
1 解釈概念としての絶対無 2 悪への自由と絶対知
3 へーゲル超克の視点 4 絶対無の弁証法
注
あとがき
索引
【著者略歴】
山口 祐弘 (やまぐち まさひろ)
1944年 東京生まれ。
1968年 東京大学文学部哲学科卒業。
1976年 東京大学大学院人文科学研究科哲学専門課程博士課程単位取得満期退学。
1986年 ブラウンシュヴァイク大学客員研究員。
1989年 東京理科大学在外研究員Ph.D.
現在 東京理科大学理学部教養学科教授
主要著書:『ヘーゲル読本』共著、法政大学出版局(1987)、『近代知の返照―ヘーゲルの真理思想』学陽書房(1988)、『ドイツ観念論における反省理論』勁草書房(1991、改訂2刷2001)、『意識と無限―ヘーゲルの対決者たち』近代文芸社(1994)、『ヘーゲル―時代を先駆ける弁証法』共著、情況出版(1994)、『カントにおける人間観の探究』勁草書房(1996)、『原典による哲学の歴史』共著、公論社(2002)、『哲学をつくる』共著、知泉書館(2005)
主要訳書:ヘーゲル『理性の復権―フィヒテとシェリングの哲学体系の差異』共訳、アンヴィエル(1982、再刊、批評社、1995)、ヴォルフ『矛盾の概念―18世紀思想とヘーゲル弁証法』共訳、学陽書房(1984)、ホルクハイマー『理性の腐触』せりか書房(1987)、ユンク『原子力帝国』社会思想社(1989)、ツィンマーリ『哲学への問い―ヘーゲルとともに』晢書房・理想社(1993)、シュベッペンホイザー『アドルノ―解放の弁証法』(2000)、フフィテ『一八〇四年の知識学』(2004)