Hattori2001.jpg

  服部康喜 著

  A5判・上製・244頁
  定価5,040円(本体4,800円+税)

  ISBN978-4-8205-6238-2
  2001年3月

  →ご注文

激動する昭和の四半世紀を、 歴史の〈終末〉=自らの〈滅び〉と感受した歴史意識の周縁に、特異な文学方法を開花させた太宰治。本書は、昭和初期から戦後にかけての太宰文学を終末論的視点から捉え直す。

【目次】

予備的ノート

序章 終末と宿命―太宰文学の起点と帰点―

 一、太宰文学における終末論的基底 二、犯罪への恍惚と不安―「地主一代」の基底―

第一章 絶望の現象学― 『晩年』の試行―
 一、〈私〉という「堕天使」―「玩具」の擬態―
 二、異能の逆説―「ロマネスク」の彼方へ―
 三、「逆行」の光源―ある根源への遡及―
 四、自我という影絵―「彼は昔の彼ならず」の風景―
 五、表層のたわむれ―風景としての「陰火」―

第二章 希望への回廊
 一、徒労あるいは〈信〉への旅程―「道化の華」の臨界点―
 二、〈卑俗〉への回路と優しさ―「ダス・ゲマイネ」の位相―

第三章 物語・時・読者―太宰中期作品の諸相―
 一、文体という仮面―太宰女性独白体の意味―
 二、〈形あるもの〉への応答―「富嶽百景」・語る〈私〉と富士―
 三、〈芸術〉への執着と戦争―「一燈」における〈具体〉の位相―
 四、〈終わり〉への存在―太宰文学におけるイエス像―
 五、決断の季節―「花火」・悪への投企―

第四章 終末への遁走
 一、神なき〈家族〉―「ヴイヨンの妻」・逸脱する〈語り〉―
 二、終末の前景と〈罪〉―「人間失格」・放棄された可能性―

第五章 付論
 一、太宰への架橋・〈他者〉と〈自由〉
    ―芥川「芋粥」における干渉する物語―
 二、太宰文学における〈地獄〉の意識―〈他者〉という天使と悪魔―

あとがき初出一覧


【著者略歴】

服部 康喜 (はっとり やすき)

1951年 兵庫県生まれ。関西学院大学大学院修士課程終了。活水女子短期大学日本文学科専任講師を経て、1992年から活水女子大学文学部教授。著書(共著): 『太宰治Ⅱ』、『講座昭和文学史』第4巻(以上、有精堂)、『太宰治 』 (国書刊行会)、『太宰治』(若草書房)、『川端文学の世界3』(勉誠出版)、『〈新しい作品論〉へ〈新しい教材論〉へ』4(右文書院)他。

お問合せ・ご相談はこちら

教育・福祉・思想など人文・社会科学関係の学術書・テキストブックの出版を行っている学術出版会のホームページです!