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日野資純 著

A5判・並製・296頁
定価3,780円(本体3,600円+税)

ISBN978-4-284-00059-8
2007年4月

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現代の社会は、一見平和のようでも戦前への回帰や右傾化が進んでいる。戦中に空襲を受けて死に直面した著者が、戦中の思想や教育上の問題点を反省し、今後も平和憲法を基礎として個人の尊厳や言論の自由を守り抜くことの重要性を多様な実例によって訴える。

【目次】

まえがき

Ⅰ 二一世紀に生かせる戦中の問題点
 1 体験から思う、「米国追随」の危うさ
 2 「玉砕」までして守るべき価値はない
 3 文化庁『心のノート』は危険度高し
 4 死を拒む方策、世界とともに熟考したい
 5 「平和のため」という発想の奥にあるものは?

Ⅱ 戦中教育の問題点
 6 「生きて虜囚の……」―『戦陣訓』の吟味―
 7 「査閲」に示された権力―学校教育への軍の介入―
 8 渡辺一夫氏の『敗戦日記』
 9 「この戦争は神の、み心に沿わぬ」―戦中の教会での一コマ―
 10 出陣する学徒へ「死ぬなよ」と教師は言った
 11 写真は戦地から遂にとどかず―出征兵士からのたより―
 12 軍歌によりマインド・コントロール
 13 「軍艦行進曲」では、今、元気は出ない
 14 敗戦体験から戦中をふりかえる

Ⅲ 歴史教育と戦後教育の問題点
 15 忠実に即さぬ「日本軍」の降伏―教科書検定批判―
 16 「残留孤児」を教材にしてみては?
 17 戦争の痛みと歴史教科書
 18 『新しい歴史教科書』批判
 19 疑問の多い「教育改革推進会議」
 20 重要な欠陥を含む、新学習指導要領案
 21 「教育改革国民会議」の報告批判
 22 国立市(東京都)の小学校を混乱させた「国旗・国歌法」
 23 東京都教育委員会の起立調査に違憲の疑い

Ⅳ 自衛隊についての問題点
 24 自衛隊海外派遣の根拠とした調査を公表せよ
 25 外国から見れば、自衛隊は「軍隊」
 26 自衛隊の本音の聞いてみたい
 27 「自衛隊法改正案」に「国家秘密法(案)」の影響

Ⅴ 靖国問題
 28 今だからこそ問われる靖国
 29 「英霊参加」の戦争とは本末転倒

Ⅵ 平和憲法と言論の自由をめぐる問題点
 30 護憲・改憲の両論者による講演会に期待したが……
 31 「時代の変化」を改憲の理由にするのは疑問
 32 「不戦決議」は憲法を踏まえるべきだ
 33 戦争体験から憲法を考える
 34 「護憲」の声を、来年も出そう
 35 護憲と改憲の対立軸は貴重
 36 憲法を尊重しない法務大臣がいる!
 37 昭和末期、天皇制主題の集会への干渉
 38 世論で防ごう、自由への圧力
 39 東京都庁の爆発物は、市民社会の敵
 40 「問答無用」のしそうを排す―朝日新聞襲撃事件に触れて―

Ⅶ 平和をめざす営み
 41 武力では守れない平和国家日本
    ―侵略への身構えではなく友好の重視を―
 42 核戦争の回避には、まず対話から―人間不信を取り除こう―
 43 平和志向こそが防衛策の原点
 44 歴史の逆流を許すな
 45 国家機密法(自民党修正案)の本質を見抜こう
    ―「不当な方法」のあいまいさ―

Ⅷ 開戦と敗戦の問題点
 46 日中戦争の延引は中国人への差別観
 47 一二月八日、二つの問題点
 48 真珠湾で開戦の日を思う
 49 放送番組に乏しい、反戦の姿勢
 50 私の「八月一五日」
 51 敗戦でも価値観の変わらぬ人がいる
 52 「もう一年早く、戦争が終わっていればなあ」との声
 53 戦友の死を思う投書に触れて
 54 国家の力で、個人が再び抑え込まれぬためには?
 55 私たちの知恵が問われている
    ―「国家総動員法」(一九三八年)と有事立法―
 56 九月十八日も忘れてはならない―「満州事変」への突入―
 57 私の弁当に突然黒い手が!―敗戦直後の車内で―
 58 沖縄で、知人の戦死した弟と「対面」

Ⅸ 原爆をめぐる問題点
 59 大江健三郎氏のノーベル賞受賞と『原爆体験記』に寄せられた文章
 60 文化勲章辞退への批判は不当
 61 被爆五十年目のヒロシマに寄せる―平和志向をヒロシマから世界へ―
 62 原爆展問題と日本の教科書検定
 63 原爆投下の主因は日本の開戦
 64 丸木位里さん、赤松俊子さんの『原爆の図』発表当時の感想文
 65 永井隆氏著『長崎の鐘』の刊行事情
 66 長崎原爆資料館での「説明文」削除
 67 沖縄での原爆展を政府も応援せよ

Ⅹ 空襲についての体験と問題点
 68 敵機の襲撃で危機一髪
 69 「勤労奉仕」の最中に受けた吸収
 70 「東京空襲」「東京大空襲」の名称とその内容に注意が必要

XI 新しい祝日の問題点
 71 忠実と離れた「建国記念の日」
 72 「海の日」は国民の祝日として適当なのか

あとがき


参考文献
参考資料
主要年表

【著者略歴】

日野 資純 (ひの すけずみ)

1926(大正15)年、東京渋谷区生まれ。
東京大学文学部を1951年3月卒業、国文学科・国語学専攻。弘前大学、駒澤大学、静岡大学、静岡英和女学院短期大学の教職を経て、1996年3月定年退職。静岡大学名誉教授。
日本語学会会員、朝風の会、静岡県近代史研究会会員

主著:
『方言学論考―観察と実践―』東宛社、1984
『日本の方言学』東京堂出版、1986
『基礎語研究序説』桜楓社、1991
『古典解釈のための基礎語研究』東宛社、1996
『日本語のキーワード』東宛社、2000

主要論文:
「相模方言の素描―その方言区画―」『国語学』9、国語学会、1952
「『形態素』の記述について」『国語学』47、国語学会、1961
「語論」『講座現代語1』、1963
「現代の方言と国語史」『講座方言学1』国書刊行会、1986
「国語史研究の一方向」『国語学』196、国語学会、1999 

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