
山路勝彦 著
A5判・上製・336頁
定価(本体4,800円+税)
ISBN978-4-8205-8000-3
2004年1月
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帝国日本の根底を支えた二つの鍵概念「無主の野蛮人」と「可愛い子ども」。台湾人自らの統治能力を否定した上で、その保護者を自認した日本人の修辞法。その「大きな物語」と、植民地官吏、「原住民」ら個々人の「小さな物語」の交錯を描く。
【目次】
はしがき
第1部 植民地主義の言説
第1章 植民地主義、台湾、人類学への断章
第2章 「無主の野蛮人」と人類学
1 日本人の「野蛮人」観
2 台湾の植民地政策
1)台湾と「無主の野蛮人」 2)森林政策の展開と同化政策
3)アイヌと台湾 4)日本の人類学と人類学者
第3章 植民地台湾と「子ども」のレトリック
1 未開幻想
2 台湾総督府理蕃課
3 「子ども」のレトリック
4 無垢と可愛らしさ
第2部 台湾の植民地官吏
第4章 台湾総督 上山満之進と原住台湾人の表象
1 西欧の表象―女と東洋―
2 上山総督と植民地台湾
3 「神聖なる文明」と昭和期植民地官吏の視線
第5章 「文明化」への使命と「内地化」―台湾植民地官吏の実践―
1 台湾山地の生活改善運動
1)「特別行政区域」としての山地
2)生活改善運動の展開
3)台湾山地の「内地化」
2 集団移住政策の展開
1)総督府と「蕃人移住十箇年計画」
2)『理蕃の友』に見る集団移住
3 植民地官吏の実践―岩城亀彦と平沢亀一郎―
4 植民地官吏としての視線
第6章 国語演習会という饗宴
―皇民化政策下の台湾と教育所の子どもたち―
1 教育所―警察官吏の学校―
2 台湾総督府の戦略
3 日木語狂潤―国語演習会の競演―
4 日本人の創造
第3部 植民地での人類学
第7章 「梁山泊」の人類学、それとも?
―台北帝国大学土俗人種学研究室―
1 台北帝国大学上俗人種学併究室
2 移川子之蔵、宮本延人、そして人類学者の面々
3 植民地での人類
第8章 帝国の人類学者と台湾
―台北帝国大学土俗人種学研究室への来訪者―
1 古野清人、デュルケム、アジア主義
2 鹿野忠雄と軍隊
3 小泉鉄と無頼漢の人類学
第9章 ブヌン族の「絵暦」研究釈義
―植民地台湾での人類学研究の断面―
1 植民地官吏と人類学
2 ブヌン族の絵暦
3 植民地官吏と「民族」の展示
4 人類学者の絵暦研究
5 絵暦研究という語り物
第4部 植民地主義のゆくえ
第10章 高砂義勇隊と心のなかの日本
1 植民地官吏による伝説の創出
1)「愛国乙女」という伝説 2)日本人としての自覚
2 戦場での高砂義勇隊
1)精神主義の構え 2)男性性の表出
3 信頼の絆と戦場での言説
4 回想のなかの日本―テイコク主義、ジュウ主義、そして日本精神―
あとがき索引
【著者略歴】
山路 勝彦 (やまじ かつひこ)
1942年生まれ。東京都立大学大学院博士課程(社会人類学専攻)終了後、1973年に関西学院大学社会学部専任講師、助教授を経て、現在、同大学教授。台湾、中国の少数民族の研究に従事。関連著作として、『植民地主義と人類学』(共編著、関西学院大学出版会、2002年)。