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土方正巳 著 

菊判・上製・500頁
定価12,600円(本体12,000円+税)

ISBN978-4-8205-5555-1
1991年11月

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浮き沈みの激しい新聞界にあって、 明治・大正・昭和の三代にわたり独特の紙面で多くの読者に愛され親しまれた 『都新聞』 の誕生から終焉までを綴る。 著者は、元都新聞文化部長・東京新聞編集局長。写真160点収録。

【目次】

第一章 夕刊『今日新聞』の創刊

タ刊として発足/短すぎた準備期間/後見役・仮名垣魯文/創刊号の体裁と内容/その日の事をその日に/前途に待ち受ける困難/条例違反で重禁固刑/日本橋村松町へ引越し/硬軟両派の記事見本/紙面改革と社説を新設/新聞小説の移り変わり/新聞小説の挿絵画家/斎藤緑雨の新聞遍歴/「印刷鮮明」を誇示/“安値の官報”が売りもの/毎夕社改め今日新聞社/坂崎紫瀾と和田稲積/黒岩涙香の探偵小説/九月下旬、ついに休刊/日辻安五郎が登場/黒岩涙香主筆となる


第二章 『みやこ』から『都新聞』へ

『みやこ新聞』改題一号/定価一銭に値下げ/柳・桜に都鳥の図案/次つぎに主筆が交代/雉や狐がいた荒れ地に/最新式堂々たる煉瓦建/地の利を得た新社屋/主筆級の記者勢ぞろい/右田寅彦の劇評と艶種/紙面に活気・売行き上昇/加内長二郎、事業に失敗/楠本正隆の手に移る/慮高朗、社長代理に就任/涙香、楠本社長と衝突/探偵叢話思わぬ大受け/田川、主筆として入社/広津柳浪の活躍ぶり/書評と読書欄を重視/相馬事件をめぐって/改題五周年の景品政策


第三章 日清戦争、遂に始まる

田川主筆、第一回の退社/検閲の前に萎縮した報道/二日後に掲載された宣戦の詔勅/後任の主筆・宮川鉄次郎/戦場に従軍記者を送る/相次ぐ勝報に号外連発/従軍記者・大谷誠夫/危く発行停止を回避/探偵実話『娘義太夫』好評/堺利彦の兄・本吉欠伸/和気あいあいの編集局/日清戦争が終わって/「百事問答」で読者と交流/定価いっせいに値上げ/次第に増える社員数/柳浪の『三都走馬燈』中断/明治三十年代の紙面/青々園が入社するまで/「近世実話」次つぎに劇化/若い日の脱線行状記/付録雑誌『都の華』の創刊/遷都三十年の祝賀行事/“時の喝采”を受けた渡辺黙禅/人気投票を販売に利用/観桜会と芸達者揃い/義和団、山東で蜂起/都式新活字創鋳に成功/八甲田山の雪中遭難/経済商況記事が充実/満韓交換論に猛反対/日露開戦前のイライラ/伊原青々園が再入社/屋上に「都姫」像を安置


第四章 日露戦争と苛酷な検閲

日露開戦近しの声/開戦!従軍記者を派遣/火花を散らす号外戦/木版に代わる写真版/おそすぎる戦争報道/提灯行列で死者二十人/軍部の内面指導強化/日本海々戦の勝報/講和条約の破棄を提言/戒厳令下・新聞の取り締まり/戦中戦後の紙面から/「遊覧案内」広告の始まり/新しい読物「新講和」/山口定子、人気投票に入選/田川大吉郎、再入社内定/電車賃値上げに断固反対/市内各所で電車襲撃騒ぎ/「読者と記者」と「一事一言」/黙禅の時代小説受ける/日露戦争後の社員の動き/艶ダネ記者・吉見蒲州/工業資料欄などを新設


第五章 明治末期の記者たち

誤報を率直に詫びる/苛酷な新聞紙法施行/マリノニ輪転機を増設/音楽記者・白井嶺南/中里介山の入社と仕事/平山蘆江が入社/連載第一作『氷の花』/相原熊太郎の「巡回通信」/見習記者・恒藤恭/堺利彦の翻案小説/硬派の夜勤制度確立/社会面の四版制を実施/幸徳秋水の書簡を掲載/初号二段見出しの出現/石割松太郎の『洗髪のお妻』/ “月曜のよみもの”欄開設/広告のトップは化粧品/みやこ案内欄の始まり/自動車、飛行機に関する記事/「読者文芸」の選者・鴬亭金升/中里介山と「独身会」会員/読者サービス遊覧会企画/長谷川伸の入社/長谷川伸の記者活動/市電ストで青々園が単独編集/明治天皇崩御・その夜/黒ワクの紙面に溢れる悲しみ


第六章 大正時代の幕開き

乃木大将夫妻が自刃した夜/“大正政変”で新時代の幕開き/大谷誠夫、桂擁護派へ傾く/民衆、議事堂を包囲/紙面に見る焼打ちショック/本社焼打ちを語る夢声と伴陸/大谷誠夫、硬派から軟派へ/新聞紙法違反で罰金五十円/花柳色が濃くなった紙面/『紅筆日記』をめぐって大騒ぎ/大衆文学発生の地/講談社と都新聞の深い関係/大正博覧会の赤毛布見物/中里介山『大菩薩峠』始まる/秋元生の家庭小説『終りまで』/『大菩薩峠』続編と続々編/介山の『浄るり坂』と『間の山』/木村毅と『大菩薩峠』/長谷川伸の長編『横浜音頭』/シーメンス事件の発端/シーメンス事件更に拡大/内閣攻撃の火の手あがる/新聞検閲ますます強化/山本権兵衛内閣ついに互解/第一次世界大戦始まる/外務省も検閲に乗り出す/柴田三郎を青島へ特派/固さのぬけぬ記事文体/御大典と本紙一万号記念/世界大戦景気、紙面にも反映/松崎天民、夜の編集に従事/松崎天民の社内人物評/次第に派手になった社会面/映画の取り締まりと記事の扱い/寺内超然内閣に反対


第七章 異色福田英助の登場

失意の田川主筆欧米へ/シベリア出兵と米騒動/厳しい記事禁止令に反発/大阪朝日新聞の“白虹事件”/松井須磨子の後追い自殺/物価軒なみに暴騰/用紙の値上げ、経営を圧迫/定価改定と広告料値上げ/印刷ストで四日間休刊/深刻な新聞ストの余波/短歌・俳句欄の移り変わり/都々逸から“情歌”“街歌”へ/昇給運動腰くだけ/新しいオーナーに福田英助/手始めに給料三割増を断行/中里介山の退社と『大菩薩峠』/資本金百万円で株式会社化/山本信博、編輯局長となる/選挙資格をめぐる論戦/高揚する普通選挙運動/大正十年=テロと情事の年/「赤字」入りの綴じこみ/出版・化粧品広告のいろいろ/須田栄の『花柳千夜一夜』/福田社長の積極的経営/全国最高の十二頁建て/“開かれた新聞”の先駆け/「写真小説」の連載始まる/『御酒落狂女』大当たり/新ポイソト活字で内容充実/全二段の文芸欄を新設/『大阪新報』苦境に陥る/大阪新報、『大阪都』と改題/大正十二年の紙面から/金井紫雲編集の「月曜読物」/夢二の自画自作小説始まる/各社一斉に漢字制限を提唱


第八章 関東大震災の余波

震災当日の木社の状況/報知から救いの用紙/復刊第一号の紙面/『大阪都』にみる震災報道/東京復興のきざし/営業、販売部門の拡大/深川合同店の紙止め/水上瀧太郎の『都』讃美論/演劇・映画界の早い復興/新聞社とラジオ放送・新聞社提供のニュース原稿/販売店、社の方針に不満/二頁のラジオ版を創設/充実した「都ラジオ版」/社内の平和と結東を強調/試験採用以前の社員達/作家になった長谷川伸/ソ連特派員・蔵原惟人/『黒駒の勝蔵』が大ヒット/『大阪都新聞』ついに休刊/大正天皇崩御の号外戦/「光文」誤報事件の真相


第九章 大陸の戦火、紙面に

定期入社試験が始まる/十四頁建てで記者を増員/社報の発行と紙面改革/“満州国茶重大事件”の波紋/東英社を解散、旧制度へ/「ミツワ文庫」暫く休載/世界的大恐慌始まる・資本金百六十五万円に/日曜夕刊を発行する/文芸欄を築いた人びと/上泉秀信と文壇仲間/画家出身の飛田角一郎/連載中編小説に新鮮味/懸賞小説で新人発掘/小林多喜二『新女性気質』/『報知』の付録政策に対抗/新旧交代・大きな節目/福田恭助米国から帰国/満州事変一報を落とす/現地では電通が圧勝/設備面での立ちおくれ/演芸面の座談会企画/多彩なカット紙面を飾る/満州事変上海へ飛び火/昭和七年の新入社員達/特高警察の目、本社に及ぶ/減量経営のため大量馘首/文芸面、知識層に受ける/コラム「大波小波」始まる/ラジオ面の「一日一評」/舟橋聖一『白い蛇赤い蛇』/『人生劇場』の連載始まる/単行本 『人生劇場』の運命/尾崎と中川絶妙のコンビ/積極的な読者サービス/漫画で政治面に軟か味/昭和九年の新入社員/社長、横浜生糸取引所を兼任


第十章 朝夕セット制を実施

上泉、初代文化部長に就任/昭和十年・試験入社の人びと/スマートな新社屋竣工/“昭和巌窟王”救出の努力/東宝・花柳界紛争の巻添え/昭和十一年組の人びと/二・二六事件の勇敢な取材/官邸一番乗り・山口喬の手記/戒厳令下の新聞・ラジオ・漫画/事件後も厳重な取り締まり/緊張をといた、“阿部定”事件/朝夕刊セットを計画/常時夕刊、華冷しくスタート/「狙撃兵」「一皿料理」「時局漫画」・夕刊要員の大量入社/大和球士のプロ野球評相/用紙使用制限と値上げ/広田内閣に代わる林内閣/予算秘密会の記事で発禁/野口整理部長が引責辞職/北支事件から支那事変へ/昭和十二年・入社した人びと/文化部関係の異色記者/東京セネタースを専属に/牧野良三、総動員法を批判/国家総動員法に抵抗する/上泉秀信が退社するまで/昭和十三年入社の人びと/十三年六月入社の人びと/“最後の映画記者”早田秀敏/第二次用紙制限令出る/外報部独立の動き始まる/上海からのルーシー特電/演芸面のサムライたち/「鵜の目」「タ刊コント」など/昭和十四年入社の人びと


第十一章 国策による新聞の統制

文化映画製作に着手/退職金積立制度かわる/用紙事情ますます悪化/新官僚による新聞支配/減ページにつぐ減ページ/本社の“無償献納”宣言/「狙撃兵」から「推進隊」へ/テレビ試験放送始まる/内閣情報部から情報局へ/「新聞紙等掲載制限令」公布/「日本新聞聯盟」設立へ/古沢磯次郎頭角を現す/昭和十五年入社の人びと/新聞用紙統制を強化/難航した新聞の共同販売/新聞経営論の“本音”/大谷・伊原両理事の死去/紙面に残る検閲の爪跡・『縮図 』無念の連載中止/大本営御前会議開く/第三次近衛内閣の成立/東条英機内閣の出現/開戦間近か、夕刊二頁へ/“太平洋戦争”始まる/文芸欄一面から六面へ/新聞事業令を公布/陰湿な“敬投書事件”/都新聞最後の一年間/古沢局次長実権を握る/新しい「編輯態度」を決定/新聞界の再編成始まる桟/『国民新聞』との合併問題/岡氏の「愛惜“都”の一字」


連載小説一覧
年表
あとがき
人名索引

【著者略歴】

土方 正巳 (ひじかた まさみ)

1909年(明治42年)、北海道小樽に生まれ、東京で育つ。1932年 東京大学文学部心理学科卒、都新聞社に入り、社会部から文化部へ。〈坊〉の筆名で劇評、放送批評を発表、1940年文化部長となる。東京新聞でも文化部長をつとめ、1956年から1961年まで編集局長。社団法人東京社に移り、専務理事として「総合ジャーナリズム研究所」を主宰。現在は同社顧問。

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