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  【解説・年譜】 榑松かほる (桜美林大学教授)

  全6巻・A5判・上製・総2,900頁
  定価98,700円(本体94,000円+税)

  ISBN978-4-284-10220-9
  2010年3月

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  • 明治末から昭和初期にかけて、東京高等師範学校教授を勤め、教育界に大きな影響を与えた乙竹岩造。近代日本における「教育学」という観点から、その著作を精選した、初の著作集。
  • 乙竹岩造の著作を、「教育学」という観点から見直し、精選した初の著作集。教科書編纂者、知的障害児教育の先駆者、欧米教育学説の紹介者、日本教育史の研究者として知られる乙竹の新しい一面を探り、「乙竹教育学」に迫る。
  • 文部省などの講習会における講述をまとめた『実験教育学』、師範学校の教科書として意図された『現代教育学汎論』など、当時、教育者を志す者が何をどう学んだかを知るために欠かせない資料を初めて復刻。
  • 乙竹岩造が留学先で教育学をどうとらえたのかをうかがわせる貴重な資料『欧米教育視察報告十二集』や、自身の系統の一端を披瀝したものと自負する『日本教育学の枢軸』など、、従来あまり顧みられなかった著作を積極的に収録。

【底本および各巻内容】

第一巻
欧米教育視察報告十二集(1908[明治41]年 目黒書店)

独国エナ市ニ開設セラレタル教員夏期講習会并ニ瑞西国ニ於ケル教育巡視報告/聾唖救恤ニ関スル万国会議并ニ体育ニ関スル万国会議ノ状況報告/白耳義国、和蘭国、丁国ノ学事ニ関スル報告/独逸国ニ於ケル学事ノ状況/マンハイム市ニ於ケル学級編制ノ状況ニ関スル報告/仏国学事ノ状況/現時欧州ニ於ケル性欲ニ対スル教育及飲酒ニ対スル教育ノ状況ニ関スル報告/独英両国普通教育ノ比較ニ関スル報告/男女共学ニ関スル欧州現時ノ状況ニ就キテノ報告/欧州諸国ニ於ケル手工科教授ノ状況ニ関スル報告/独逸国ニ於ケル社会教育ノ状況/北米合衆国学事状況報告

三年半にわたる欧米留学中の報告書を帰国後に一冊にまとめ、関係者へ配布したもの。若き乙竹が欧米の教育学をどうとらえ、自身の教育学をどう構築していこうとしたのかをうかがわせる貴重な報告集。


第二・三巻
実験教育学(1908[明治41]年 目黒書店)

実験教育学の起るに至りし四個の理由 最近に於ける教育学説上の四潮流第一編 実験教育学概論 第二編 身体発達養護論 第三編 直観活動陶冶論 第四編 理解活動陶冶論 第五編 意思及び情操活動陶冶論

講習会での講述をまとめた実験教育学の概説書。帰国後の乙竹は、当時のドイツにおける「従来ノ主観的叙述、演繹的説明二甘ンゼズ」「観察、実験、統計二基ク」実験教育学の紹介に努めた。柔道にもすぐれていた乙竹が、学習効率と身体の状態との関連に着目していたことも興味深い。

第四巻
輓近教育事実の進歩(1916[大正5]年 目黒書店)
生活教育の徹底/作業教授の進歩/家事教授の進歩/実業補習学校の発達/成績考査法の推移並びに現況/賞罰問題の沿革並びに前途/体育並びに学校衛生の発達/林間学校、露天学校、其他類似の教育施設/休暇移住、臨海保養、其他類似の教育施設/補助学校、補助学級の普及/能力の相異に基づく学級編制法/頴才教育及び早熟教育/図書教育の発達/師範教育の過去、現在、将来/国民高等学校並びに大学拡充運動/感化教育の発達/盲生教育の進歩/聾唖生教育の進歩/学校中心運動/少年義勇団及び青年団

序言で近時「教育思潮に関する記述」はふえているが「教育実際の事実」の網羅は稀だと述べる。制度、設備、成績考査、、賞罰、学校衛生、図書教育、校外学習から聾唖教育まで欧米教育動向全体の「事実」をおさえた研究書。

第五巻
現代教育学汎論(1934[昭和9]年 培風館)

第一篇 現代に於ける主要なる教育学説
  現時教育思潮の概観/経験的教育学説/個人的教育学説/
  規範的教育学説/社会的教育学説/人格的教育学説/
  文化的教育学説/教育科学思想及び国家主義教育学説
第二篇 現代に於ける主要なる教育方法
  現時新教育方法の概観/勤労学校問題/公民教育問題/
  芸術教育問題/自働教育法/生活による生活への教育法/
  合科教授問題/プロジェクト法/動的個別教授法/ドルトン案/
  ウイネトカ組織/職業指導問題/ゲーリー組織及びプラトゥン案/
  郷土教育問題/自治訓練問題/教科課程構成問題/
  教育測定及び学校調査
第三篇 現代に於ける社会教化の理論及び実際
  近代の社会情勢と社会教化の重要性/社会教化の理論的基礎/
  社会教化の実際的施設及び方法

師範学校教科書として意図され、「汎く現代の教育学一般に就て、その趨勢を解明せんことを意図し、然もその叙述を一層詳密にし」たもの。実験教育学、文化教育学から社会教化までを含めた、乙竹「教育学」研究の集大成。

第六巻
日本教育学の枢軸(昭和14[1939] 目黒書店)

第一篇 日本教育の性格の史的考察
  日本教育の特色/日本教育の淵源/教育の場としての
  我が国の社会/教育の場としての我が国の家/我が国の
  道徳教育/我が国の国語教育/我が国の芸術教育/
  我が国の歴史教育/我が国の地理教育/我が国の数学教育/
  我が国の理科教育/我が国の実業教育/我が国の体練教育

第二篇 欧米教育学の趨勢及び展望
  古典的教育学の要請とその結論/経験科学的教育学の発達と
  その長短/精神科学的教育学の進展とその得失/
  文化教育学の陣営とその驍将/純粋教育科学の興起とその批評/
  規範的教育学の主張とその批評/教育現象学とその批評/
  教育形而上学への再転向とその意義/国家主義教育学の新台頭と
  その展望

第三篇 日本教育学の研究 
  教育の目的の概説/教育目的一般と処時位の制約/
  日本国民教育の目的/教育の動機と我が国の風習/
  教育方法の諸面とその調整/養護の任務とその新着眼点/
  教授の任務と各教科目要旨の発揮徹底/訓育の任務と
  その主要問題/学校の範疇と日本精神/教師の類型と日本教育学

日本教育の性格についての歴史的考察、欧米教育学の最新の動向と展望、日本教育学の研究の三部で構成されている。時局政策に合致した研究ともいえるが、乙竹は、この書で自身の系統の一端を披瀝したと自負している。

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