山口祐弘 著
A5判・上製・532頁
定価6,825円(本体6,500円+税)
ISBN978-4-284-10209-4
2010年2月
カント哲学に根ざしその完成を目指したドイツ観念論は、厳しい相互批判と対決を含む歴史であった。カント、フィヒテ、シェリング、ヘーゲルらの横断的研究によってそれぞれの思想の相互影響と発展を見ることは、この時代の思想的布置を捉える上で不可欠である。本書は、ヘーゲルが哲学的思索の道具とし、D・ヘンリッヒが注目した「反省」の概念を軸としてこの課題と取り組む。巨匠たちの手によって「反省」の当初の限界と「反省哲学」が如何に超克され、「哲学的反省」が生まれていくかを辿ることで、神、人、自然をめぐる新たな思想的空間とその綾が見えてくる。前著『ヘーゲル哲学の思惟方法』に続く画期的な問題史!
【目次】緒論
第1部 哲学体系の理念と可能性
梗概
第1章 人間理性の自己照明―カントにおける批判哲学可能性
序
一 体系理念の問題性
ニ 悟性の比量的活動
三 対象認識の反省的構造
四 自己知の回路
第2章 体系知の原理と可能性―フィヒテにおける知識学の課題
序
一 知識学の原理と体系
ニ 知識学の方法
三 根本命題への理路
四 知的直観の限界
第3章 同一性哲学への階梯―シェリングの体系構想
はじめに
A 超越論哲学の隘路
序
一 自我論の課題
ニ 知的直観の変容
三 自己意識の構造
四 反省史のアポリア
B 自然哲学の体系性―反省の診断と要請
序
一 近代における自然哲学の課題
ニ 自然哲学のアポリアと方法
三 自然の思弁的考察と全体像
四 自然の根源的分裂
第2部 反省哲学の克服
梗慨
第1章 転換期の精神状況―ヘーゲルの哲学的課題
序
一 ヘーゲルの時代意識
ニ フフィテ哲学における反省の支配
三 絶対者の体系
四 シェリング批判の萌芽
第2章 反省批判の岐路―ヤコービとヘーゲル
序
一 知の批判
ニ 非知の哲学
三 直接性の逆説
四 ヤコービとヘーゲル哲学
第3章 反省の意味転換―概念思想の形成
序
一 反省と直観
ニ 知的直観の概念化
三 悟性的論理の超克
四 絶対的概念の反省構造
第3部 思弁的真理と反省理論
梗慨
第1章 真理観の言語論的考察―ヘーゲルの真理思想
序
一 判断と主語中心主義
ニ 思弁的命題と述語主義
三 二律背反と反省理論
四 主体的真理と反省主体
第2章 概念の運動と反省規定―ヘーゲルにおける体系の理念と方法
序
一 概念の行程と体系の結構
ニ 運動の本質論的解明
三 自己内還帰のプロセス
四 動的体系の論理
第3章 思弁の動態と現代性―反省的考察
序
一 思弁思想の起源と変遷
ニ 思弁と反省
三 反省の自己関係性
四 現代における思弁的思惟
第4部 観念=実在論の競合
梗慨
第1章 知識学の体系性―真理論と現象論の循環
一 後期知識学の課題と問題
ニ 真理への道程
三 存在の記述可能性
四 現象論の前提
第2章 観念=実在論の鼎立―ドイツ観念論の内部論争
序
一 絶対的無差別の意義と評価
ニ シェリングの観念=実在論
三 ヘーゲル批判
四 ヘーゲルにおける概念と存在
第3章 概念の形而上学―カント哲学の理念と継承
序
一 カント継承の課題
ニ 超越論的認識の立場
三 概念思想の無限性
四 概念の自己関係性
五 哲学の主体と対象
第5部 総括
ドイツ観念論における反省的思惟の射程
序
一 反省と反省哲学
ニ 反省の自己否定と転換
三 概念の運動と反省諸規定
四 反省的思惟の作用域
注
欧語参考文献
索引
【著者略歴】
山口 祐弘 (やまぐち まさひろ)
1944年東京生まれ。1968年東京大学文学部哲学科卒業。1976年東京大学大学院人文科学研究科哲学専門課程博士課程単位取得満期退学。1986年ブラウンシュヴァイク大学客員研究員。1989年東京理科大学在外研究員Ph.D. 現在東京理科大学理学部教養学科教授。
主要著書:『ヘーゲル読本』共著、法政大学出版局(1987)、『近代知の返照―ヘーゲルの真理思想』学陽書房(1988)、『ドイツ観念論における反省理論』勁草書房(1991改訂2刷2001)、『意識と無限―ヘーゲルの対決者たち』近代文芸社(1994)、『ヘーゲル―時代を先駆ける弁証法』共著、情況出版(1994)、『カントにおける人間観の探究』勁草書房(1996)、『原典による哲学の歴史』共著、公論社(2002)、『哲学をつくる』共著(2005)『ヘーゲル哲学の思惟方法-弁証法の根源と課題』(2007)
主要訳書:ヘーゲル『理性の復権―フフィテとシェリングの哲学体系の差異』共訳、アンヴィエル(1982再刊、批評社、1995)、ヴォルフ『矛盾の概念―18世紀思想とヘーゲル弁証法』共訳、学陽書房(1984)、ホルクハイマー『理性の腐触』せりか書房(1987)、ユンク『原子力帝国』社会思想社(1989)、ツィンマーリ『哲学への問い―ヘーゲルとともに』晢書房・理想社(1993)、」シュベッペンホイザー『アドルノ-解放の弁証法』(2000)フフィテ『一八〇四年の知識学』(2004)