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山田知子 著

A5判・上製・304頁
定価3,990円(本体3,800円+税)

ISBN978-4-284-10210-0
2010年4月

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多角的なアプローチにより、大都市に生きる高齢者層の実体を解明!超高齢社会を迎える日本社会の進むべき方向性を示唆!

本書は、大都市高齢者の貧困・生活問題の創出過程とその要因について、「社会的周縁化」という切り口で分析し、その創出構造を解明することを目的にした研究書である。近年の先行研究の丹念な分析、欧米の社会的排除概念の検討、養護老人ホーム入居者の生活記録調査などを通じて、大都市に住む高齢者の個人的な諸問題が社会的要因によって創出され重層化していく実態を明らかにする。そのうえで、高齢者の生活・人生を包括的に捉える生活支援政策、社会システムの構築の必要性を提示する!

【目次】

はじめに

Ⅰ 研究の目的と方法

1. 研究の背景
  1)貧困・生活問題の変容  2)自助努力、自立の強制型福祉政策
  3)市場化する高齢者の生活支援サービス
  4)経済危機と高齢者家族

2. 研究の目的・対象・方法
  1)研究の目的  2)対象としての大都市の養護老人ホーム
  3)研究の方法 1――統計調査  
  4)研究の方法 2――生活暦調査法について
  5)仮説  6)本研究の社会的意義  7)社会的周縁化

3. 高齢期と貧困・生活問題研究の動向
  1)高齢期の貧困の特徴  2)高齢者の貧困と住宅
  3)高齢期の不平等

4. 我が国における貧困研究
  1)中鉢の「生活の疎遠」  
  2)江口のDeprivation(生活不安定)と生活遍歴 
  3)岩田の生活様式からの乖離、社会的結合からの排除
  4)高度経済成長下の農村生活の不安定化
  5)旧産炭地域における失業と生活意欲喪失による貧困化

5. 我が国における社会的排除概念をめぐって
  1)社会的な援護を要する人々と社会的排除  2) EUの概念の流入
  3)社会福祉と社会的排除―マスメディアからのインパクト
  4)学際的なアプローチのはじまり

6. 諸外国における社会的排除――所得を超えて、過程と結果
  1)社会的排除の概念の源流  2) ブレアの「第三の道」にみるSE
  3)公共政策研究所「包摂的社会―貧困と取り組むための戦略」
  4)SEのいくつかの定義と研究アプローチ
  5)アメリカの貧困研究(Underclass)
  6)ジェンダー(Gender)、人種(Race)、貧困(Poverty)
  7)開発と貧困  8)イギリスのSEユニットにおける高齢者と社会的排除

7. 貧困・生活問題研究の潮流とその論点


Ⅱ 高齢期の経済的不安定性と格差

1. 我が国の高齢者の経済的位置
  ――OECD『1990年代後半のOECD諸国における所得分配と貧困』
     (2005年)を中心として
  1)国民間における所得格差  2)高齢者世帯の所得格差

2. 高齢者の家計構造――社会保障給付の減少と預貯金の取りくずし
  1)高齢無職世帯における家計収支  2)無年金高齢者の状況
  3)高齢単身世帯の貯蓄  4)高齢者の資産

3. 東京の被保護高齢者世帯の状況――世帯の原子化と貧困化
  1)戦後の生活保護率の変化
  2)東京都の被保護高齢者世帯の状況

4. 高齢者層の貧困化


Ⅲ 大都市の居住不安定性――劣悪な居住環境

1. 高齢者の住宅の所有関係および居住水準  1)大都市高齢者の借家率  2)東京の高齢単身世帯における居住水準

2. 公営住宅および民営住宅と高齢者
  1)借家の住環境  2)入居拒否と高齢者
  3)大都市における借家の家賃

3. 都営住宅居住者の高齢化  1)都営住宅名義人の年齢  2)家賃減免の状況

4. 路上生活者と高齢者の住宅問題
  1)不定住的貧困と大都市高齢者
  2)民営借家居住者から中高年ホームレスへ

5. 住宅不安と生活問題への連動


Ⅳ 大都市高齢者の貧困・生活問題の創出過程・要因・構造(1)
   ――生活歴調査の意義と目的および調査対象など

1. 貧困・生活問題研究における生活歴調査
  1)生活歴調査の意義と目的
  2)対象設定について――養護老人ホームの入居者
  3)調査対象としての養護老人ホーム入居者、その代表性および普遍性
  4)2つの生活歴調査について  5)生活歴調査の概要

2. 大都市の養護老人ホームの動向
  ――経済・住宅・家族問題などを抱える高齢都市生活者の受け皿
  1)老人福祉法における入居条件  2)全国の入居者の状況
  3)東京の養護老人ホームの特殊事情
    ――低所得都市高齢者層の終の棲家


Ⅴ 大都市高齢者の貧困・生活問題の創出過程・要因・構造(2)
   ――東京の養護老人ホーム人居者生活歴調査(1992年)における
      貧困・生活問題の創出過程

1. 男性入居者の貧困・生活問題の創出過程(1992年)
  1)明治・大正生まれの生活背景  2)男性入居者49名の概況
  3)1992年男性入居者の生活困難形成過程の事例的考察
    ――家族の非形成と関係破壊
  4)1992年男性入居者の貧困・生活問題創出過程と社会的周縁化
    ――表層としての高齢者問題、深層としての社会的周縁化

2. 女性入居者の貧困・生活間題の創出過程(1992年)
  1)女性入居者87名の概況
  2)1992年女性入居者の生活困難形成過程の事例的考察
  3)1992年女性入居者の貧困・生活問題創出過程と社会的周縁化の構造


Ⅵ 大都市高齢者の貧困・生活問題の創出過程・要因・構造(3)
   ――東京の養護老人ホーム人居者生活歴調査(2005年)における
      貧困・生活問題の創出過程

1. 男性入居者の貧困・生活問題の創出過程(2005年)
  1)大正・昭和生まれの入居者の生活背景
  2)2005年男性人居者の貧困・生活問題の要因
  3)2005年男性入居者の社会的周縁化過程――事例的考察
  4)大正・昭和生まれの男性の社会的周縁化過程と
    その貧困・生活問題創出の要因・構造

2. 女性入居者の貧困・生活問題の創出過程(2005年)
  1)2005年女性入居者の貧困・生活問題の要因
  2)2005年女性入居者の社会的周縁化過程――事例的考察
  3)大正・昭和生まれの女性の社会的周縁化過程と錯綜する性差別構造


Ⅶ 結論

1. 高齢期の貧困・生活間題創出過程の3類型
  1)類型 1:幼少・青年期の貧困・生活問題要因によって
         生涯、貧困・生活間題を抱える
  2)類型 2:壮年期に形成された貧困・生活問題要因によって
         生活傾斜し、そのまま高齢期に至る
  3)類型 3:高齢期に新たな貧困・生活問題を抱える

2. 貧困・生活間題創出の共通要因――生活支柱のゆらぎと社会的周縁化
  1)生活支往のゆらぎ  2)ライフステージと生活支柱
  3)再生能力における中心と周緑

3. 社会的周縁化の創出構造
  1)階層性に違動する生活意欲の低下と社会的周緑化
  2)ジェンダーと社会的周縁化
  3)疾病・障害への差別、偏見と社会的周縁化
  4)社会的支援、社会保障・社会福祉サーピスの未整備と社会的周縁化

4. 社会的周縁化と高齢期の貧困・生活問題の創出構造

5. 今後の課題

おわりに――感謝をこめて


【著者略歴】

山田 知子 (やまだ ともこ)

大正大学人間学部環境コミュニティ専攻・大学院人間学研究科教授
日本女子大学大学院文学研究科博士課程前期社会福祉学専攻修了(社会学修士)
北九州市立大学大学院社会システム研究科博上課程早期修了博士(学術)
放送大学生活と福祉専攻助教授、埼玉県立大学保健医療福祉学部社会福祉学科助教授を経て、2004年より現職

主要論文・著書「わが国のホームへルプ事業における女性職性に関する研究」『大正大学研究紀要』90号、2005年/『社会福祉マニュアル』南山堂、2006年/『社会福祉原論Ⅰ』大正大学出版会、2007年/「我が国における介護労働とジェンダー」大正大学社会福祉学会編 『しなやかに凛として」中央法規、2008年/『社会福祉原論Ⅱ』大正大学出版会、2009年/『社会福祉研究』放送大学教育振興会、2010年

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