感覚的な批判や称賛を超えて、「お受験」というベールに隠された早期選抜問題として、小学校受験を真摯に注視する!
現代の日本社会のように、市場化された社会における教育選抜は、本人の能力や努力よりも、家庭の経済力や親の教育願望といった「ペアレントクラシー」をベースとしたものに変質するという。本書は、受験家庭に対する調査を通して、受験の低年齢化の帰結であり、ペアレントクラシーに基づく教育選抜の象徴である私立小学校受験の実態を実証的かつ具体的に描き出すものである。小学校受験を考えている家庭はもちろん、教育選抜問題に関心があるすべての人におくる必読書!
【目次】
まえがき
序章 問題の所在
第1章 私立小学校に通う子どもたち
1 私立小学校の学習費
2 私立小学校の児童数の推移
3 私立小学生のみられる地域
第2章 現代の私立小学校
1 私立小学校数の推移
2 私立小学校の所在地域の偏り
3 私立小学校のおかれた社会的文脈の変化
第3章 私立小学校の多様性――「小学校卒業後の進路」に着目して
1 併設上級学校への性別による「進学資格」
2 外部中学への進学状況
3 「小学校卒業後の進路」による私立小学校の類型化
4 「小学校卒業後の進路」類型による私立小学校の実像
5 「小学校卒業後の進路」類型による受験者側のニーズの量と質
第4章 私立小学校受験の実態
1 誰が受験をするのか
2 なぜ受験をするのか
3 どのように受験をするのか
4 子どもとの日常的なかかわり
第5章 小学校受験の影響に対する認識
1 子ども(受験児)への影響
2 家族や親への影響
第6章 私立小学校受験家庭の教育観・進路観・社会観
1 教育観
2 進路観
3 社会観
終章 今後の課題と展望
参考文献あとがき
索引
【著者略歴】
望月 由起 (もちづき ゆき)
2004年 お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程単位取得満期退学
2005年 博士(学術)Ph.D.in Sociology
2004〜2010年 横浜国立大学大学教育総合センター入学者選抜部専任講師を経て准教授
2010年〜現在 お茶の水女子大学学生支援センター准教授
著書:『進路形成に対する「在り方生き方指導」の功罪――高校進路指導の社会学』(2007年・東信堂)/『キャリア研究を学ぶ――27冊を読む』(共著・2009年・泉文堂)