「古典」再発見のシリーズとして

寺﨑昌男 (立教学院本部調査役・東京大学名誉教授)

国立国会図書館の明治期・昭和戦前期の蔵書はマイクロ化され、さまざまな出版社から多種の単行本が復刻されている。「戦前の本」にアプローチするのに古本収集の必要がなくなったように見える。しかし半ば古典化した本であっても、果たしてどれだけ読み継ぎに値するものか、どのような学術史的・思想史的役割を果たしたか等は、容易に明らかにできる課題ではない。

学術出版会のこの叢書は、いわば現代における古典再発見のためのシリーズだと言えよう。特に、「教育」の項の吉田熊次城戸幡太郎谷本富、春山作樹、木村素衛といった「著作集があるべきだった」先学たちの名が含まれていることに、賛意、いやむしろ謝辞を表したいと思う。

 

学術著作集ライブラリーの発行を喜ぶ

山本義彦 (静岡大学理事・副学長)

これまでの学術作品で、著作集などとして発行されてこなかった著名な人びとの作品を集めて、ライブラリーが発行される。私も以前に『清沢洌選集』(全8巻・別冊1)を発行していただいた者である。

刊行が予定されている桐生悠々は、第二次大戦期に勇気ある自由主義的ジャーナリストとして清沢洌も絶賛する「信濃毎日新聞」主筆として書いた「関東防空大演習を嗤(わら)ふ」と題する社説で、日本の敗北は必死であると予言した。また吉田熊次城戸幡太郎も教育会の指導的思想家であり、山高しげりは婦人参政権獲得期成同盟会の結成に参加、戦後も婦人の地位向上に取り組んだ。今や得難いこれら先人の著作を学ぶ機会が与えられることは学界、思想界に多大の貢献となろう。

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